第12回「水中カメラから見つめる富山湾」
大田希生(水中カメラマン)
12.1 春の水中景観
① 海中林が発達する季節。海中林は海藻が森のように繁茂している
場所。生物が多く、海のゆりかごとも呼ばれる。富山湾西部の灘浦海岸沖には高さ10メートルに達するホンダワラの仲間がジャングルのような海中林をつくる。メバル、キヌバリ、クロダイ、カミクラゲ、オワンクラゲの生態を映像で観察する。
② ホタルイカの身投げ。新湊から魚津にかけての海岸に深夜から
朝方にかけてホタルイカが打ち上がる。
③ 赤潮の発生。ヤコウチュウというプランクトンが大発生する
ため。
④ 海底湧水量が増加する。東部の海底には伏流水の湧出する場所が
多いが、とくに5月頃は1年で一番湧水量が多い。
⑤ アマモの開花。アマモは陸上植物の仲間。
⑥ ワカメ漁。
12.2 夏の水中景観
① 虻が島周辺の光景。夏季のみ遊覧船が就航する。
イワガニ、カエルウオ、フグの仲間、コケギンポ、チャガラ、メジナ、キヌバリ、ホンベラ、オハグロベラ、グビジンイソギンチャク、アカヒトデ、シロウミウシ、アオウミウシ、リュウモンイロウミウシ、キンセンウミウシ、タマミルウミウシ、ハクセンミノウミウシ、ヒブサミノウミウシ、フジイロウミウシの生態を動画で紹介する。
② 緑色になる海水。水温が上昇するとともにプランクトンが増加し
海中の透明度は低く緑色になる。
ミズクラゲ、カサゴ、スズメダイ、ツメタガイ、スナチャワン、アンドンクラゲの生態を動画で見る。
③ 砂地の生き物たち。昼間は隠れているが、夜になると活発に動き
回る生き物たち。
タイワンガザミ、シマウシノシタ、クサフグ、オニオコゼ、メリベウミウシ、ミミイカの生活を映像で見る。
12.3 秋の水中景観
① 回遊魚が岸近くで多く見られる。秋は海水の透明度が高くなり、
魚も増えるためダイビングのベストシーズン。
アカカマス、マアジ、メジナ、イシダイ、メバル、スズメダイ、ヒメジ、アオリイカ コブダイ、アミメハギ、カワハギ、フクラギ、ヨウジウオ、マダイの生態を動画で見る。
② 暖海性の生き物が回遊してくる。遊泳力の弱い生き物が対馬暖流
に乗り日本海を北上し富山湾には秋から冬にかけて入ってくる。冬になり水温が下がると死んでしまうため死滅回遊魚とよばれる。
ソラスズメダイ、フエダイの仲間、キンチャクダイ、エチゼンクラゲの生態を動画で観察する。
12.4 冬の水中景観
① 透明度が最も高くなる。水温が下がるとともにプランクトンが
少なくなり透明度が高くなる。ホンダワラの仲間ではアカモクが海中林をつくる。
アカモク、アイナメ、アユの幼魚、ハタハタの生態を動画で見る。
② 最も水温が下がる2月下旬から4月上旬にだけ現れる生き物がい
る。ミズダコ、ヤリイカ、ニジカジカの生態を映像で観察する。
12.5 海中の環境変化と水中環境改善の取り組み
① 雨晴沖のテングサ場の時系列変化。テングサの好漁場である
高岡市雨晴沖の近年の状況を紹介する。
② 海底ゴミの映像を見る。
③ 藻場造成と取り組むNPO法人「富山湾を愛する会」の海藻増殖
実験を紹介する。
12.6 「まとめ」にかえて
水中カメラで富山湾を見ていると「豊穣の海とはなにか」と考えさせられ、海底湧水とそこの生物群集に出会うたびに「富山湾の生きものにも私たちにもおなじ立山の水が流れている」と海の仲間としての愛(いと)おしさを強く感じる。
以上